ライカの「コマ間ばらつき」にご用心
どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。前回に続いてライカを買ってくれたお客さんの悩み話をもうひとつ。今回はコマ間が広かったり狭かったりするから、このライカは不良なんじゃないかという相談についてです。ちゃんと整備していないカメラは現像したフィルムのコマとコマの間が不規則になることがある。ウチのライカは整備済みだからそんなことないと思って、すごい剣幕のお客さんが持ってきたネガを見てみると、たしかにコマ間が開いたり狭くなったりして見える。
ライカM3と超広角レンズ
そこで、ネガにモノサシを当てて撮影されている画面の横幅を測ってみたんだ。すると、あるコマでは36ミリで、あるコマでは37ミリ以上ある。「なるほどねぇ。最近スーパーアンギュロンを買ったでしょ?」とネガを見ながら聞いたら、「え?何でそんなことが分かるんですか」と自称プロカメラマンのお客さんは一瞬考え込んだね。
スーパーアンギュロン21ミリ
レンズマウントより後ろにレンズがとび出した超広角レンズの代表といえばスーパーアンギュロンです。一眼レフ用のレンズと違ってレンズとフィルムとの距離がすごく短くて、しかもすごい広角だからフィルムの端には斜めの光線が入ってくる。実はカメラに四角く空けられた穴とフィルムは密着していなくて、すこしだけ空間がある。そこに斜めの光線が入るから、四角い穴よりも広く光がフィルムに届くんだよね。
21ミリレンズのコマ間
実際に撮れる横幅は広くなるけれど、フィルムの穴8個で1コマという送りは同じだから、コマ間は狭くなっちゃうんだね。これが標準レンズや望遠レンズであれば、まっすぐ光が届くから、カメラに空けられた四角い穴とだいたい同じサイズでフィルムに露光するんだ。
90ミリレンズのコマ間
ほら、見るからに広角レンズよりコマ間が太いよね。つまり、事件の経緯はこうだ。スーパーアンギュロンを買ったお客さんは嬉しくなって標準レンズと超広角レンズをとっかえひっかえ交換しながら1本のフィルムを撮った。そうすると、あるコマとコマの間は狭く、その隣は広くなっているという現象が起きるんですね。それをコマ間ばらつきと勘違いして血相変えて来たということなんですよ。でもね、このお客さんプロを自称しているだけあって飲み込みが早くてね、フィルムにモノサシあてながら説明している途中で「早田さん、分かりましたっ。この話しは無かったことにしてください」って帰っちゃったんだ。
コンタックスとビオゴン21ミリ
ひとことにしては長いけど、こんな悩みはライカに限ったコトじゃないんですよ。コンタックスにビオゴン21ミリを付けて撮ったフィルムのコマ間も狭い。これと標準レンズを組み合わせたらライカと同じことが間違いなく起きる。でも、不思議とコンタックスを買ってくれたお客さんから同じクレームが来たためしがないんだよね。