クラシックカメラ 今月の「ひとこと」

マキナ3Rのミッシングリング。

どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回のカメラはミュンヘンで見つけてきたプラウベル・マキナ3R。マキナは1970〜80年代に日本で作られた6×7判のカメラが有名だけど、その元ネタになったのがドイツの6×9判のマキナ。作っていたのはフランクフルトなので、ミュンヘンからだと北西に進んだ場所だね。戦前の1925年に登場して改良を重ね、1950年代に最終モデルのマキナ3Rを出した。このカメラはレンズ交換式なんだけど、だいたいどのマキナにも付いている標準レンズがアンチコマー10センチF2.9なんだ。

マキナ3Rとアンチコマー10センチF2.9
マキナ3Rとアンチコマー10センチF2.9

アンチコマーは、レンズの『コマ収差』を除去したからアンチ『コマ』だと思い込んでいる人もいるみたいだけど、コマ収差のコマって日本語だからね。ちなみにアンチコマーの描写ってすごく甘い。これじゃ使い物にならないって戻しにきたお客さんがいるほど甘い。ローライならプラナーが甘口でクセノタールが辛口。フォクトレンダーならヘリアーが甘口でスコパーが辛口と選べるんだけど、マキナはアンチコマーだけっていうのが残念な感じもする。

たたむと小さいマキナ
たたむと小さいマキナ

でも、戦後の日本ではマキナを新聞社の機材として多用していたみたいなんだよね。戦争に負けて、進駐軍が入ってきてアメリカ製のスピードグラフィックを置いていったから新聞社はそれをお下がりで使っていたんだけれど、フィルムが4×5インチの大判だから感材費もバカにならない。とはいえライカ判では新聞で製版するにはフィルムが小さすぎる。だからブローニフィルム6×9判のマキナって、数を撮るときには使いやすかったみたい。

ひろげると立派なマキナ
ひろげると立派なマキナ

でね、昔に新聞社の写真部に居たっていうお客さんが教えてくれたんだけど、アンチコマーの甘さを解消するリングがあって、それをレンズの先端にくっつけてF5.6より絞って撮ると、ものすっごくシャープに写るんだって。それから何台もマキナを売ったけど、そのリングが付いていたのはたった1度だけだったね。たいがいそのリングはなくなっちゃってるの。ミッシングリンクならぬミッシングリングだね。

マキナ3R整備済みフルセット 29万4000円
マキナ3R整備済みフルセット 29万4000円

このリングなしで、マキナを甘口と辛口の両方楽しみたいとすると、実は戦後のコーティングしてあるアンチコマー100ミリF4.2を使うと、すっごいシャープな写真が撮れる。リングはお金を出しても探すのは難しいけれど、このレンズなら時おり出てきますよ。

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