こだわりのスイス製カメラ、アルパ。
どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回のカメラはスイスの時計部品メーカー、ピニオン社が作ったアルパです。1944年から始まって1989年までの間に生産された台数が全部で4万2000台くらいしかない。1機種じゃなくてアルパぜんぶでこの台数だから普通のカメラメーカーじゃないよね。少ししか作らなかったから値段も猛烈に高いものだった。
ボルシーレフレックス(左)とアルパアルネアモデル7(右)
アルパってバリエーションの多いカメラだけれど、基本的には最初機のアルパフレックスと、その後のアルネア型で大きく設計変更されている。アルパフレックスはライカにミラーボックスを組み込んだみたいなものだね。アルネア型になると最初からちゃんと一眼レフとして設計されている感じ。でもパーツの組み方が普通のカメラメーカーとは違う部分が多くて修理には手間取るんです。だけど、中身のギアなんか素晴らしい出来映えで、さすが時計部品メーカーという感じなんだよね。
ボルシーレフレックス アンジェニュー・アルパー付き
アルパを設計したのはユダヤ系スイス人のボルスキーさん。有名なスイス製の映画撮影機、ボレックスなんかも設計しているよね。初期モデルのアルパであるアルパフレックスには、北米輸出用としてボルシーフレックスという名前のものもある。アルパは自社でレンズを持たずにフランスやオランダ、ドイツの光学メーカーから提供を受けていたんだ。
アルパアルネアモデル7 ケルン・マクロスイーター付き
その中でも、一番スゴイのがスイスの映画撮影機専用のレンズメーカー、ケルン社がアルパのためだけに特別にスチルカメラ用に提供したマクロスイーターだね。アルパアルネアにマクロスイーターを付けたら遠景から接写までバッチリですよ。このモデル7にはライカみたいな距離計も付いているので素早くピントを合わせられるけれど、アルパの基本的な使いかたとしては、じっくり腰を据えて撮るべきなんだ。振り回しながら撮ったり、移動中のクルマの中で撮ったりすると故障してしまうリスクがある。そういう撮りかたを想定した設計じゃないんだ。
アルパ10d ただいま修理中
デザインが角張った感じに変ったアルパ10型になっても、シャッター関係の基本的な設計って学術用途を主としていたアルネア型の頃から変わらないんだよね。頑固なこだわりを持ったスイス人の職人が作り続けたカメラって感じなんだけれど、修理の立場から言わせてもらえば設計に改良の余地がありすぎて「何で?」「どぉして?」の連続だね。要するに修理するのが面倒くさいカメラなんです。とはいえギアとか軸受けの精密さとか、部品の重なり具合なんかには感心しちゃうね。