正真正銘のレアカメラ、トロピカル・リリー
どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回は日本最古のカメラメーカー六桜社が作ったトロピカル・リリーです。このカメラは基本的にドイツの名門フォクトレンダーのベルクハイルやツァイス・イコンのマキシマを手本にして作った戦前のカメラなんだけど、トロピカルタイプのリリーっていうのは、とんでもなく珍しいんですよ。
六桜社 トロピカル・リリー
この手のカメラは普通はアルミの枠に革を貼ってあるものなんだけれど、熱帯に持っていくとサビの問題があったんだろうね。トロピカルは何十年も寝かした上等な木材を使って組んであるんです。
トロピカル・リリーのマーク入り
このカメラを初めて見たのは1960年頃のこと。先代が鉄道研究所の払下げ品として手に入れたんだけど、その当時の早田カメラは現像マンを雇っていて、その彼がどぉしても欲しいって言い出した。売値なら5万は下らない珍品だったんだけど、千円の15回払いの月賦で譲ってくれって頼まれて、結局は現像マンのものになったんです。
畳んだ姿もキレイなトロピカル・リリー
それから時は流れて1993年頃、とあるビッグコレクターが店にきてトロピカル・リリーを探しているって言うんだね。こっちは「まずないでしょ、あっても150万以下では出てこない」って言ったら「じゃあ、これで探しておいて」ってポンと150万円おいていった。そこで件の現像マンのところに行ってトロピカル・リリーを譲ってくれって持ちかけたら簡単に譲れるもんじゃありませんよ、相当な値打ちものでとか何とか言ってるので「100万なら、どぉかな?」って現金を出したら目の色が変わってね、数えるときに指が震えてた(笑)。30年間レアなカメラを持っていて、1万5千円が100万になったというお話。
トロピカル・リリー 整備済み630.000円
このトロピカル・リリーは、もと現像マンの品物ではなくて2012年のオーストリア・ウエストリヒトオークションで入手したもの。30年に1度見つかっていたのが20年に1度になったから、次は10年後に出てくるかもしれない(笑)。いずれにしてもド珍品ですよ。