アドボケイトとイコネッテ。
どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回は大衆向けのカメラ2台をまとめて紹介します。アドボケイトとイコネッテ。どぉしてこの組み合わせなのかといえば、語呂がいいから(笑)。何となくトリスタンとイゾルデみたいで格好いいでしょ。どちらもカメラにしては珍しい色で何となくお洒落な感じもする。
【イコネッテ(左)とアドボケイト(右)】
アドボケイトはイギリスのフィルムメーカー、イルフォードが作ったカメラなんだ。発売は1949年。当時のカメラ誌には「英国における記念碑的なカメラである」と書かれたらしい。どこが記念碑的なのかといえば、イギリスで最初の広角レンズ専用カメラだからじゃないかな。名門ダルメイヤーに発注した35ミリ広角レンズが固定装着されていて、これが驚くほどよく写る。あんまり売れたんで、後期には同じくイギリスのWRAY(レイ)にレンズを発注したモデルもある。いずれもボディは金属製でアイボリーのエナメルラッカー仕上げ。
【イルフォード アドボケイト】
いかにもイギリス人が考えそうなカメラだよね。ドイツが「剛」でフランスが「柔」だとすると、そのどちらでもないんだ。シャッターにしてもフィルムの巻き上げにしても、これこそイギリスって感じです。
アドボケイトの登場から9年後の1958年にドイツから登場した大衆機がイコネッテ。かのツァイス・イコンが作ったカメラなんだ。ボクはこのカメラが好きです。まずカタチが可愛い。そして当時としては画期的なABS樹脂のボディで、ビス2本で分解出来るしファインダーの対物レンズには大胆にもプラスチックレンズを使っているし、巻き上げ機構はワイヤーだし、すごく未来的で斬新なデザインだよね。
【ツァイス・イコン イコネッテ】
フィルムの巻き上げとシャッターのチャージは「招き猫のウデ」を動かすしくみ。これをアメリカの消費者雑誌が尋常じゃない回数で耐久テストをしたら、ウデの部分にヒビが入ったと書き立てたらしい。それでツァイスは回収しますって宣言したんだけど、ほとんど戻ってこなかったみたいだね。今でも中古市場に姿をみせるから、そんなに壊れやすいカメラじゃなかったんだよ。きっと当時のアメリカの大衆機であるアーガスとかアンスコが、とんでもない脅威に感じたんだと思う。そこで何か圧力をかけたんじゃないかな。イコネッテが商業的に失敗しなかったらツァイス・イコンはこんな流れのデザインで、新型カメラを次々作れたはず。それがどんなカメラになったか見てみたかったよね。