謎だらけの珍品カメラ、ローランド。
どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回のカメラはちょっと珍しい。なにが珍しいって純正のレンズキャップが付いていてね、そこにクラインビルドプラズマートってエンボスされているんだ。何のことやら意味不明だよね。だから順を追って説明します。これはドイツのプラズマート社が作ったローランドというカメラ。ちなみに日本の電子ピアノメーカーとは関係ありません。このカメラは、蛇腹じゃなくて金属鏡筒式としては世界で最初に連動距離計を内蔵したカメラなんだ。
120のロールフィルムをセミ判で16コマ撮れる。1931年の発売だから、スーパーセミイコンタより3年も前に登場しているんだ。
【ローランド2型】
作られた数がメチャクチャ少なくて、2000台もない。ダイキャストボディに真鍮のボードが載って、そこにレンズ繰り出し用のヘリコイドがあってファインダーの距離計と連動してる。どういうコンセプトで設計されたのか意図がちょっと判らないけど、たぶん当時としては小さいセミ判のフォーマットで速写できるカメラを目指していたのかな。
それより謎なのがレンズなんだよ。設計したのはDr.ルドルフ。かのテッサーを設計した人なんだ。でね、このクラインビルトプラズマートっていうレンズは、テッサーみたいなすごいシャープな写真とは違うんだよね。もちろん絞ればピントはくるんだけれど、開放で無限遠でモノクロの風景なんか撮ったら山水画みたいになったりするんだ。
【レンズはクラインビルトプラズマート 70mm F2.7】
人の目って、実はそんなにシャープに世界を見ていないじゃない。その見え方を写真のレンズで再現しようとしたのかなぁ。とか思ったりもするんだけどね。さらに突っ込んで考えると、Dr.ルドルフの設計したキノプラズマートっていうレンズはすごいソフト。かたやマクロプラズマートっていうレンズは細密な描写なんだ。この2本の持ち味を絞りの数値を変えることで1本のレンズで実現しちゃおう!とか、そんな意図もあったのかもしれない。もしかしたら現代の高性能なフィルムを使って写真を撮ることで、設計した当時のDr.ルドルフの狙いが見えてくるかもしれないよね。