早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第三十九回 イギリスでカメラを探す

ロンドン・ポートベローで(1994) ロンドン・ポートベローで(1994)

これはね、ポートベローの蚤の市だね。ロンドンは土曜日が蚤の市で、日曜日はカメラフェアをやってるの。昔はね、普通に陶器を売っている脇でカメラを売っているみたいな感じでたくさんカメラがあったの。いまではみんな辞めちゃったけどね。ロンドンは大英博物館の近くに中古カメラ屋がまとまってあったんだけど、それも今はなくなっちゃった。それとイギリスのヨドバシカメラみたいな店が下取りした中古カメラも結構面白いものがあったんだけど、その店そのものが無くなっちゃったんだよね。何て名前だったかなぁ。思い出せないなぁ。ドイツならザウターみたいな感じのイギリス最大のチェーン店だったんだけど・・。

それはそれとしてさ、ポートベローに行き始めた頃って、カメラだけ置いているような店がいっぱいあったの。だから結構楽しみで行ってたんだよね。インド系の人でカメラを売っている人も多かったかな。どんどん寂しくなっていったけどね。実はポートベローって駐英国大使公邸から近いから、林大使も歩いて蚤の市まで来てたの。行きつけのジョージって言う人の店があって、買うわけじゃないけど仲良しだったね。1m50cm四方くらいのお店よ。そういう感じのところがガァーって集まってるのが蚤の市だから。今はコロナだから絶対ダメだけど、とにかくすごい人だった。本当に土曜日の朝8時頃から人がびっちり歩いてるの。すごいよね。スリもいっぱいだけど(笑)。本当に面白かったね。

写真のお店ではね、マリオンソホ・トロピカルを買ったんだよね。そこはとにかく木製のちょっと手に入らないようなクラシックカメラを並べてたの。その中にトロピカル・ウナの物凄いキレイなのがあったの。それをね、値切ってたやつがいたんだよ。アメリカ人だか何だか知らないけどグダグダとね。そうやって値切っていたもんだから、『いいよ、その値段だったらオレが買うよ』って言ったのよ。そうしたらね、そいつが『そんなのダメダ!オレが買うんダ!』とか言って買ったのよ。最初は値切ってたんだよ、ズゥーっと。もともと本当に欲しかったんだと思うんだよね。だから慌てて買っちゃったわけよ。

その後で店のおじいちゃんから『ありがとう』って言われたの。『あいつ、しぶとくてね、まけろまけろって言い続けてたんだ。お前が言ってくれたから助かった。ところで何か欲しいものあるか?』って機嫌よく話しかけてくれたから、『このマリオンソホ・トロピカルはいくらだ?』ってオレは聞いたのよ。値段がついてないんだから。そうしたら『お前ならいくらでいいよ』ってなって買ったのよ。懐かしいなぁ。そのときお金が足りなくて、『ごめん、金が足りないんで貸しといて』ってチヨミさんに小切手を切ってもらったんだよ。ロンドンではいつもチヨミさんが一緒についてきてくれてたの。要するにボクはドイツ語なら大丈夫なんだけど、英語はあんまり喋れないからね。