早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第三十三回 米国大使公邸からの招待状

独立記念日を祝って(2004) 独立記念日を祝って(2004)

どうこれ、すごいでしょ。これはね、アメリカの独立記念日のパーティーがあるから来てくれっていう招待状なの。なぜかうちの店にアメリカ大使館の外国人が招待状を持ってきたんだよ。郵便屋さんじゃなくて、大使館の人が手渡しで持ってきたの。宛名を見たらミスター&ミセス早田。もうびっくりだよね。あわててイギリスで一緒に中古カメラを見て回ったことのある林大使に電話してさ、「どうしたらいいですか?」って聞いたんだよ。林さんは英国大使だったから、こういうことはよく知ってるから。

そしたら「あのね、なんて書いてあります? あ、平服ね。それは普段着じゃなくてアメリカ式の平服というのはこうで・・」とか、いろいろ教えてもらったの。それで夫婦で背広とドレスを作って、もう大変だったよ。あれはびっくりしたね。背広は浅草松屋で作ったんだけど、そのときに1回着たきり(笑)。もう着られないと思うよ、あの頃より少し太っちゃったから。仕立てとしては、薄手の合物だよね。アメリカの独立記念日って7月4日だから。

それでね、パーティーは7月3日だったんだけどタクシーのお兄ちゃんにアメリカ大使公邸まで行ってくれって言ってさ、何しろ敷地が広くて公邸の入り口まですごく遠いんだけど、タクシーを止めて招待状を見せようとして窓を開けたら「早田さんですね」って言われたんだよ。あれにはタクシーのお兄ちゃんもびっくりしてたね。誰が乗ってるのか分かっているんだからすごいよね。それで、公邸の入り口近くで招待された客がみんな並んで待ってるのよ。何でかって言うと、入り口のところで一人づつ大使が握手して、挨拶してから中に入っていくの。

アメリカ大使公邸って広くてさ、プールがあるんだよ。あれは噴水かな?四角いんだけど。で、プールの向こう側で楽団が演奏してるの。それで福田康夫さんとか河野洋平さんとか、もうびっくりするような人がうぉんうぉん来てるわけよ。御馳走はすごかったよ。とにかく世界中の料理が置いてあって、立食パーティーなの。たくさんは食べないけどね。うーん美味い不味いは覚えてないなぁ。寿司は食べたの覚えているけど。何しろ暑かったしね。あのときは。

この228回目のアメリカ独立記念日をお祝いするパーティーに呼んでくれたのが、ハワード・ベーカー駐日大使なんだよね。何でそうなったのかと言うと、彼のコダック・エクトラ2を俺が修理したからなの。そう、ただのエクトラじゃなくて、エクトラ2だよ。