早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第三十二回 家族ぐるみのおつきあい

ヨーロッパの古城で(1994) ヨーロッパの古城で(1994)

最初は世界中を旅行して回る計画で、長い間留守にしているとカメラを狙われるのが怖いって奥さんが言ったから自宅にあるカメラを売ることになったんだけど、シュトラッサーさんはその間に目覚めちゃったんだよね。カメラフェア(フォトベアゼ)に持って行って売るようになって、それが儲かっちゃったの。それで夫婦旅行はやめて商売するって言い出しちゃったのよ。

フォトベアゼはオーストリアだけでなくフランスにもイギリスにも、いろんな国にあるじゃない。そこに遊びに行きながらカメラを売ったり買ったりするのが奥さん的にもOKになっちゃって、なんだか知らないけど南アフリカまでカメラ持って行ったらしいからね。いや、あれは普通の旅行だったかも。なにしろ日曜になるとどっかでカメラフェアがあると出かけに行って、奥さんもそれでいいや。みたいになって。結局カメラを処分して無くなったと思ったらまた増えてるんだよね(笑)。

それでもう、「お前の子供達も連れてきなさい」ってなって家族ぐるみのお付き合いが始まったんだよ。オーストリアのちっちゃい湖のそばとかさ、いろんなところに連れて行ってくれた。奥さんがね、上手なのよ料理が。行くたびにいろんなご馳走を作ってくれた。オーストリアでは外食はしなかった?そりゃ外食もしましたよ。レストランでは11月だとガチョウの季節だからガチョウばっかり。アヒルのクソでかいやつで、あんまし美味しくないの。大味でね。3、4、5月は白アスパラ、シュパーゲルね。春の季節の旬のものでだから美味しい。ドイツ人も大好きだよね。シュトラッサーさんは糖尿病だったけど日本から客が来るとワインを飲ませるために用意するわけ。そうすると自分もちびっと飲めるわけ。

シュトラッサーとはいろんなことがあったよ。本当に面白かった。

この写真は息子のアツシが高校に入った時だから、1994年かな。場所はチェコだかオーストリア だったか忘れちゃった。でね、右にいる眼鏡をかけている日本人がウチの店の経理を担当してくれている税理士のヨシヤなの。まだ税理士になる直前かな。

親戚みたいな雰囲気だけどどういう関係かって? 最初はお客だったんだよ。忘れらんないよ、銀座松屋のカメラショウに出し始めの頃M42とか東ドイツのレンズとかを沢山並べてたでしょ。そこにあいつが来て一番前に並んで「これと、これと、すいませんこれも、これも、これも」ってずぅーとやってて、後ろにうわぁーって欲しい人がいるわけ。だけどこいつの買い物が終わらないと受けてる方は動けない。でもまだ「これも、これも」ってやってるのよ、本当に10本以上、ほとんど全部、うちの会計士が会計士じゃない時代にごそっと買うわけよ。そしたら端っこにいて待っていたお客さんが「あんたもういい加減にしなよ、みんなが待ってるんだから!」って怒っちゃって。じゃあもういいですって一番前から引いた瞬間に他の連中がすごい勢いで群がって買って、本当にあの時はすごかったね。