早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第二十五回 クリスティーナ・ティナ

看板犬ティナ(2000) 看板犬ティナ(2000)

この子の名前はティナ。フルネームは早田クリスティーナ・ティナ。ポメラニアンのルンが死んじゃって、そのあとにティナが来たんだよ。だからルンの最初の子供のルーリーとティナは1年くらい一緒にいたの。でね、ティナが吠えるとルーリーは自分も吠えるくせしてウルサイ!ってティナの口のあたりをガブッと噛むの。でもティナは噛まれても何にも言わないんだよね。本当に優しい子だったの。

この写真は改装する前の時代の店の入り口から撮ったものなんだけど、ドイツ語で「注意 犬が放し飼いになっています」っていうサインが貼ってあるでしょ。これを見たドイツ人が大受けしてたね。どんな猛犬が出てくるのかと思いきや、どう見ても優しそうなラプラドールが店の奥から様子を見に出てくるんだからね。

ティナが来たのは、うちで通っていたクリーニング屋さんのところにクリーニングを出していた銀座のオカマバーのママで、すごいでかい商売してた人なんだけど、よせばいいのに両方ともアメリカンチャンピオンのラプラドールのオスとメスを飼っちゃったわけ。だからチャンピオン犬の子供ができちゃったの。それが11頭。お店も休んで世話してね、結局生まれた子供を普通だったら11頭もいたら売るとかするじゃない。でも売るんじゃなくて、大事に育ててくれる人だったらタダであげますって話がクリーニング屋経由で来ちゃったの。うちは犬が好きだって知ってるから「ラプラドール飼わない?」とか言っちゃって。ティナは生まれて1ヶ月ちょっとでうちに来たんだけど、その時で5kg。あちこちにもらわれて行ったんだけど5匹くらい残ってたのかな。それで何匹かチョロチョロしていてティナが一番ちっちゃかったの。メスで。それでもらって来たんだよね。だからオカマバーのママは時々ティナの様子を店まで見に来てくれてたよ。綺麗な女性。本当にどう見ても綺麗な女性なんだよ。

ヨーロッパに行ってカメラの仕入れをしている間、もちろん子供たちは家にいるんだけど僕らがいないからティナは怒るんだよね、勝手に。最初はいい子なの。でも2週間も姿が見えないでしょ。そうすると最後はフラストレーションがたまりにたまって我慢できなくなって、店に置いてある椅子をかじって壊したりなんかして。毎回毎回なんだけど帰って来た途端「ああ、またか」みたいな感じなの。ティナはもう嬉しくて嬉しくてウワーッって2階から降りてくるの。それで、お母さんが「誰これやったの!!」って叱ると2階にビューって逃げて上がって、しばらく大人しくしてるんだよね。お母さんが一生懸命になって片付けていると、2階からこそーっと降りて来て、こっちの顔色をうかがっていたりしてさ。ティナは本当に利口で可愛かったよ。