早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第二十四回 ルンとルーリー

左がルーリー 右がルン(1985) 左がルーリー 右がルン(1985)

1980年代から1990年代の初めまで、早田カメラにはずーっとポメラニアンが居たんだよね。この前に話をしたメリーは、ちゃんと子供を産んだつもりで結局出て来たのはウンコで終わって、メリーに子供はできないことがわかったわけよ。その時点でうちがちゃんと世話するのを見ていたから、メリーを連れて来たブリーダーの人が顎がしゃくれてて売り物にならないやつを、こいつに子供を作らせてくれって持って来たの。それがルン。右のAGFAの額に入ってるのがルンね。

血統としてはすごいし体も小柄だから、ルンの子供ができるとすごく高く売れるわけ。だから「メリーはダメだったけど、今度はこの子に作らせて!」みたいな感じで連れて来やがったの。それでね、まだちっちゃかったルンとメリーを一緒に散歩させてたの。ルンはまだ1歳半くらいで繋がないといけないけど、メリーは繋がななくても一緒にくっついてくるから全然OKだったわけ。で、それを盗まれたの。

散歩に出るとメリーはいつも弁天山の電柱のところでおしっこの匂いを嗅いでるの。だからいつもルンと先に行って角を曲がってるとメリーがついてくるんだけど、来ないからおかしいなと思ったらもうやられてた。弁天山公園に隠れてるヤツに狙われちゃったの。メリーは抱かれてもワンともキャンとも吠えない犬だったから、そのままさらわれちゃったんだよ。だから早田カメラには1年もいない。メリーが盗まれたときは本当にショックだったよ。そこいらじゅうに写真を配って「盗まれたんです!見つけたら教えてください」ってやったんだけどダメだったね。

ある人に聞いたんだけど、これだけの犬だと絶対に千住の方の泥棒犬の市場で売られてるって。しかもバレないように毛色も変えられてるから多分だめですよって。でも売られてもさ、そこで可愛がられてるならばそれでいいかと。

それからルンはすごく小さかったんだけど頑張って子供を産んで、最初に生まれた2頭のうち1頭は死んで、生き残ったのがルーリーなの。メスだからルーリーを売ってくれって言われたけど、ちっちゃくて本当に可愛いんだもの。結局売らなくなっちゃって。で、ルーリーと散歩に行くじゃない。ある時ね、観音様の裏でこんだけ広いから大丈夫かなと思ってさ、リードを外してぽん!ってやったらピューって行っちゃったから「ルーリー!」って何度も呼ぶんだけど全然振り返らないんだよ。こっちも走って行って「ルーリー!」って捕まえたらハッ気づくんだよ。あれ? もしかしてこいつ耳が聞こえないのかなと思って獣医さんのところに連れて行ったら鼓膜がないの。

でもルーリーは多い時には4頭も産んだんだよ。それでおっぱいを吸われすぎて低血糖になって意識不明になっちゃってたの。4匹の子犬はコロンコロンになってお腹いっぱいでダンボールの中で寝てるわけ。しょうがないから獣医さんを呼んで点滴してもらって元の戻ったんだけど、あれにはびっくりした。

ルーリーはヨーロッパに行っている間に死んじゃってさ、娘がものすごく可愛がってたからパニックになっちゃってもう大変だったんだよ。浅草寺の住職の吉川先生とかが面倒を見てくれてみんなでお葬式したの。吉川先生は犬の葬式をするのは初めてだけどお経をあげてくれて。ルーリーは13歳。ルンは12歳。意外とポメラニアンの寿命って短いんですよ。