早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第十四回 目からウロコのヨーロッパ

スイスアルプスにて(1986) スイスアルプスにて(1986)

これは初めてヨーロッパに行った時の写真。どう見てもスイスアルプスだよね。日付を見ると1986年の7月25日になってるから日本を出発して10日目だね。この旅行は、浅草の店によく来てくれていた上智大学の井口先生が「早田さん、もう店を閉めるなら新婚旅行にちゃんと行ってないんだから、とりあえずヨーロッパに旅行してみたらいかがですか」って勧めてくれたから行ったんだよ。大学生協の安い航空券で行き帰りのホテル1泊だけがついていてね、あとはユーレールパスだけ買って、いろんなところに夜行列車を使って移動して。まぁ、随分と遅い新婚旅行みたいなものだよね。

だから、何が何でもカメラを探してやる!みたいな気持ちは全然なかったし、その当時は日本製の新品カメラばっかり扱っていたからヨーロッパの古いカメラのことはそんなに知らなかったしね。

でもね、ヨーロッパに行くって言ったらカメラコレクターのお客さんで村田のGG(爺)っていう人がさ「自分も行きたいけど行けないから、お前が行くんだったら好きなもの買ってこい」って100万円渡してくれたの。パリでは観光でサクレクール寺院とかエッフェル塔には言ったけど、カメラ屋が軒を連ねてるボウマルシェとか知らないから行かなかった。それでね、パリから夜行でミュンヘンに入ったんだけど、ミュンヘンってやたらとカメラ屋があったんだよね。

そこでカメラ屋の中に入ってみたら、目から鱗ですよ。何だ、いくらでもあるじゃん!っていうカメラショウ状態だったの。そこでフォクトレンダーのビトーとかビトマチックとかさ、珍しいところではシュタインハイルのカスカとか買ってね。スーツケースに入れて持って帰ったんだから、それはもう重かったよね。40kgはあったから、無茶苦茶に重かったですよ。

帰国したのは7月27日。それから全部のカメラを整備してね、とにかく1週間で全部売れたんですよ。これは商売になる!っていうことで、NHKのドイツ語講座で勉強をし始めたの。ヨーロッパでカメラの商売をするなら英語よりドイツ語の方がいいからね。そうしてその年の暮れに、JTBのウィーン支局開局記念とか何とかで、ウィーンのオペラ付きの安売り航空券が出たので、それでもう一度カメラを探しにヨーロッパに行くことになるんですよ。