早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第七十三回 ICSのいまとむかし

松屋銀座の中古カメラ市(2023) 松屋銀座の中古カメラ市(2023)

この写真は今年(2024年)の春の松屋銀座中古カメラ市のときに前の年に同じ松屋銀座でやったカメラ市で撮ってくれた写真をカメラマンの木村・直軌が持ってきてくれたものなの。すごく上手い写真だって? そりゃそうだよ、彼はタレントさんとかミュージシャンを撮るのが仕事だからね。たぶん平成元年とかその頃からプロでバリバリやっている人ですよ。今は息子さんも大きくなってカメラマンをやっていて、仕事も任せているって言ってたよ。

早田カメラがICSに入ったのは1988年だから昭和も終わりの頃だけど、それから35年も経っちゃったんだね。中古カメラ市を主催しているICSのH会長が今年亡くなっちゃったから、これから新しい会長を決めようっていうことになっているんだよ。それにしてもさ、カメラ市って年に2回あるんだけれどカメラを集めるのが大変なんだよね。

結局古くからずぅーっとやっていたクラシックカメラ屋さんは、お客さんから引き取れるからやっていけるんだけど、そうじゃないと品物がないから無理だよね。すごい大変だと思う。そういえばSカメラさんが最近500台くらい引き取ったって。ただコンタックスが主流っていうから、それがちょっと辛いよね。コンタックスってヤシカとか京セラの一眼レフじゃなくてレンジファインダーの方だよ。

でもさ、レンジファインダーのコンタックスよりもマニアックなコダックのエクトラのセットを買ってくれるような若いお客さんもいるんだよ。彼はね、フランスのフォカのセットを前に買ってくれているんだよ。フォカのセットを買ってフランスに行ってフランスの写真を撮って帰ってきたの。昔はそういうお爺さんとかがいたけれど、今回はそうじゃなくて若い人なの。そういう人が今でもいるのよ。で、今回はコダックのエクトラを買ったわけ。それでアメリカに行ってエクトラのセットで写真を撮る。コダックの本社のあるロチェスターまで行くんでしょうな。

エクトラって結構難しいカメラだからね、使い方によってはシャッターが切れなくなったり、間違ってやると写っていなかったりするからねって言ったわけ。そうしたら売った次の日に電話がかかってきて『巻き上げがまったく動かなくなりました』って。あ、そう。そうしたらこれとこれをこうやって、これをこうしてからこうやってみて、それからこうしてこうして、それでこうしてみてって言ったわけ。そうしたら『わかりました!』とか言ってて、今日電話がかかってきたの。『36枚撮りを入れて27枚写りました』とか言っちゃって、『頑張ります!』とか張り切ってたよ。ありがたいことに、こういうカメラが好きな人って今でもいるんだよね。