早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第四十二回 チバちゃんに捧ぐ

ケンブリッジ大学の近所で(1995) ケンブリッジ大学の近所で(1995)

これはケンブリッジ大学の近所で撮った写真。何だか渋くていいカメラ屋が大学の近くにあるっていうんで、チバちゃんが連れて行ってくれたんだよね。ロンドンから日帰りで往復できる距離ですよケンブリッジは。それで何か食べながら歩いてるのが僕で、カメラを構えているのがチバちゃんだね。

彼の人生って、ドイツの渡り職人みたいなものなのよ。自分を高く買ってくれるところに次々と行ってね。そういう意味ではすごいやつだったよ。東京大学を出てからニューヨークでMBA(経営学修士)を取って、それで三井銀行のニューヨーク支店に勤めて証券の取引をやってたの。しばらくして東京に転勤で戻ってくるんだけれど、そこでアメリカの投資銀行のベアー・スターンズに引っこ抜かれるわけ、東京で。その頃にうちの店に出入りするようになったんだよね。転職したばかりの頃だったと思う。うちのお客さんにはメリルリンチに勤めていたファノさんっていう人がいて、仕事ではライバルだけどカメラでつながってるお友達だったりしたの。

その流れで、チバちゃんはアル研に顔を出したんだよね。アル研っていうのはアルパ研究会っていうカメラ好きの集まり。そこでレチチナハウスの望月さんに頼りにされちゃったの。何しろチバちゃんはアルパに関しては相当詳しかったからね。チバちゃんはアル研の連中はアルパのことをほとんど知らないって嘆いていたよ。そうこうしているうちに、ベアー・スターンズのロンドン支店にボォーンと飛ばされたの。それで趣味はカメラしかないから休日はカメラフェアや蚤の市に通い詰めてさ、そこで駐英国大使の林さん(第二十回に登場)と知り合いになったんだね。

その頃、ウィーンのライカショップがロンドンの大英博物館の前にレアカメラカンパニーっていう店を出したのよ。たまたまチバちゃんがロンドンに行った時期とレアカメラカンパニーの開店が同じ時期だったの。それで「早田さん、ロンドンにも来てよ」って誘ってくれてイギリスにも行くようになったんだよね。それまではミュンヘンに行ってウィーンに行って帰る。みたいはパターンだったからね。最初にイギリスに入った時は、チバちゃんがグリニッジにも連れて行ってくれたよ。あのグリニッジ標準時のグリニッジ。カティーサーク号とか見てね、いろいろよくしてくれたの。グリニッジにいいカメラ屋があったのかって? 全然ない。あそこでカメラは買ってないですよ。