早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第六十七回 赤瀬川さんのカメラ原画集

カメライラスト原画コレクション(2018) カメライラスト原画コレクション(2018)

赤瀬川さんに売ったすごく珍しいステレオカメラのコンチュラのイラストが載っていたのは日本カメラだけど、それ以外にもアサヒカメラとかカメラ毎日なんかにも赤瀬川さんはカメラのイラストを描いていたんだよね。

カメラ雑誌ではカメラの解説記事とイラストがセットになっていたんだけど、その中のイラストの原画だけを集めて画集にしたのがこの本なの。店に1冊置いてあるんだけど、アサカメ、ポンカメだけじゃなくて小西六の会報誌のフォトコニカとかシグネチャーっていう雑誌にも載せてたのね。しかしこの本はすごいよね。見ているとうちの店のウインドウみたいなもんだね。

この中に出てくるペギー2っていうカメラはね、うちのを貸したの。記事ではイラストだけでなくそのカメラで撮った写真も載せていたでしょ。それが高島さんから借りてきたペギー2がシャッターも切れないしマガジンもないっていうんでうちのを貸してあげたの。あとね、どのカメラだったかはもう覚えてないけどちょっと具合が悪いっていうんで持ってきたのを直してあげたのもいくつもあるんですよ。

あの頃のアサヒカメラでは赤瀬川さんと毎年恒例で座談会をしてね、そのあとの飲み会がものすごい人数なのには驚いたよね。なんだかよく知らないのがゾロゾロ集まってきてね。たぶん朝日新聞出版局の人たちだったんじゃないかなって思うんだけど、アサヒカメラの編集部にいる人たちだけじゃないんだよね。

赤瀬川さんはお酒が好きだったでしょ。赤瀬川さんが観音裏の蕎麦屋でやった飲み会に誘われたとき「早田さんも来てください」って言われたもんだから行ったんだよ。他の面子は全然知らない何人か。そこの蕎麦屋って手打ちなのはいいんだけど、客の顔を見てから蕎麦を打つんじゃなくて粉から挽き始めるの。蕎麦ができるまで死ぬほど時間がかかるから、そのあいだに酒を出すわけ。だから蕎麦が出てくる頃にはもう二人ともベロンベロンだよ。その蕎麦屋はすぐに潰れちゃったよ。浅草の人間にはそんな気の長いのはいないから。なんで蕎麦食うのに1時間半も待たなくちゃいけないだって。

あと、スズメの姿焼きを食わせてくれる店ね。誰かに誘われた会なんだろうけど浅草だと赤瀬川さんは俺を呼ぶわけよ。だけど、本当にうーん?ってとこばっかり。浅草に住んでる人間は行かないような店なの。もうビックリするほど高いんだよ。スズメはね、そのままガブッと食っちゃうんだよ。姿焼きでパクパクッて食っちゃおう、みたいな。一匹食ったらもう二度と食いたくない。もう何が嬉しくてあんなもの食うんだろうね。別に肉でもなんでないんだよ、ほとんど骨だもの。

でもね、赤瀬川さんと飲んで話をするのはいつも楽しくてね、大好きでしたよ。