早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第五十九回 上海のカメラ事情

星光撮影機材城にて(2007) 星光撮影機材城にて(2007)

ICSの旅行で中国に行ったことがあるの。松屋銀座で毎年やっている中古カメラ市でものすごい量のカメラを買ってくれる中国のお客さんでTさんっていう人がいてね、彼がぜひ中国に来てくださいって言ってくれたんだよ。これは上海にある建物全部がカメラ屋になっている「カメラの城」。星光撮影機材城っていうの? よく知らないけどクラシックカメラなんかも物凄くいっぱいあったよ。コンタレックスとかライカとか。値段も付いて並んでるけど、なぜか買ってるやつが一人もいないのよ。

それまでは上海にはいろんな場所に小さいカメラ屋さんがいっぱいあったらしいんだよ。それを中国政府がガブッとやるためにこれを作って、そこに入らなかったらカメラ屋として営業することを許可しなかったらしいの。カメラ買うならここに来なきゃダメってしたらしい。それで100軒近くのカメラ屋さんが5階建くらいのすっごいでかいビルにザァ〜〜っと入ってる。それで、どの階にも5、6人の職員がうろうろうろうろしてるんだよね。今はどうなっているのか知らないけれど、僕たちが行ったときはそうでしたよ。

それで商品を見にいくとずぅ〜っとくっついてきて買うかどうか見てるの。売ったら「いくらで売ったから税金いくら」って言われるのが嫌なもんだから、店の人もおとなしくしているの。だからすごいよね。あれだけクソでかいマーケットなのに、見るだけ。本当に見るだけなの。その場では買っていないのよ。すごくいっぱい見てる人がいるんだけど、買ってる人がいないんだよ。

これって絶対に店の連中は食っていけないと思ったら、Tさんが「ここでは絶対に買いません。そうするとあいつらが全部調査するから」って教えてくれたよ。もうアホみたいな世界だよね。そういうふうにしちゃったの。コントロールしようと思ったわけよ。だって1階なんかすごいよ。キヤノンとかニコンとか日本のメーカーもデジタルカメラ並べて売ってるんだから。売りますってやってるんだけど、誰も買わない。どうやら買う時にはカナダとか香港からお金を送って手に入れるらしいの。

次の日の昼に上海蟹の紹興酒に漬けてるのを、ちびっと食べたわけよ。酒に浸かってるから大丈夫って言われて。この写真、半袖シャツなのは何故かって?上海に行ったのは6月だよ。本当は上海蟹は2月から3月にかけての決まった期間だけ生で食べてよくて、それ以外は食べちゃダメっていうのに食べたの。なんで食ったんだろうねぇ。プチッと足を取って、こうやってちびっとだけ食べて、それでイチコロだもんね。泊まっていたのが第一ホテルだから助かったんだよ、ウォシュレットが付いてたから。そうじゃなかったらお尻が血だらけになってたと思うよ(笑)。