早田カメラ史 『懐かしの1枚』

第五十二回 早川通信リターンズ

早川通信合本と早川通信R(2004) 早川通信合本と早川通信R(2004)

早川通信のことをもっと知りたいって? あれは最初何号か出して終わっちゃうかと思っていたら、結局は1996年から2003年までずぅっと中古カメラ市の会場で配布していたんだよね。20号まで出たところで、それまでのバックナンバーを「早川通信 激動の二千五百五十三日」っていう復刻版総集編に1冊にまとめて出したこともありました。

というのもね、カメラ市の会場に来るお客さんが「バックナンバーありませんか?」って聞いてくることが多かったんだよね。その理由はね、2000年から巻頭にイラストが載るようになったんだけど、それを描いてくれていたのが藤島康介さんだったの。すごく有名な漫画家さんですよ。「逮捕しちゃうぞ」って知ってるでしょ? あの漫画家さんなの。だから藤島さんのファンにしてみたら、早川通信にイラストが載っているのはものすごく珍しいモノになるわけだから、それは欲しがるよね。今だったらヤフオクとかで転売されるかもしれないけれど、その当時はそんなことはなかったですよ。

たまたま藤島さんがカメラに凝っていて、ウチに買いに来てくれていたんだよね。それで、買ってくれたカメラを女の子が持っているイラストを描いてるんです。最初はイラストだけだったけれど、その後にはカメラの解説文も書いてくれていたの。こうして復刻版総集編を見てみるとすごいよね。藤島さんがイラストを描き始める前の号から、あさりよしとおさんの「お笑いカメラ劇場」っていう漫画の連載も始まってるの。あさりさんは学習誌とかで漫画を描いていた人らしいね。だから、すごくマニアックなカメラのことを漫画にしているんだけど、とっても分かりやすいんですよ。こういう人達が手伝ってくれたのは、早川通信を作ってくれていたS木君が漫画家さんに信頼されている編集者だったからというのもあると思うんだよね。

あさりさんもたまに店に来てカメラを買ってくれたけど、藤島さんの方が激しかった。国内に飛行機で出張した帰りだと、京浜急行で羽田から浅草まで1本でしょ。だから荷物をガラガラッと引っ張ってね、ウチに寄ってくれるんですよ。それで何かカメラを買ってくれるの。早川通信は20号で終わったんだけど、2004年に「早川通信リターンズ」という名前になったんだよね。その表紙のイラストに載っている二眼のコンタフレックスも、藤島さんが買ってくれたものなんだからすごいよね。早川通信も早川通信リターンズも、今は作ってないの。だから伝説のミニコミなんですよ。